2015年06月10日 23:56
乳児股関節脱臼、見逃すな 診断遅れで治療難渋も
赤ちゃんの脚の付け根の関節が外れてしまう先天性股関節脱臼。国内ではかつて乳児の1~2%に見られたが、一九七〇年代に始まった予防啓発の効果により発生頻度は十分の一程度まで低下した。ところが近年、歩行開始後にようやく診断され、治療に難渋するケースが全国的に増えている。患者の減少で医師や保健師の認識が薄れ、ゼロ歳児の健診で見逃されるようになったことが背景にあるという。
「予想以上に診断の遅れが増えている。あぜんとしました」。日本小児整形外科学会による先天性股関節脱臼の実態調査をまとめた「あいち小児保健医療総合センター」(愛知県)の服部義(ただし)センター長は驚きを隠さない。
十年ほど前から、各地の小児整形外科医から診断遅れの症例が多いとの指摘が相次いだ。学会は二〇一三年、実態を探るため全国の千九百八十七施設にアンケートを実施し、七百八十二施設から回答を得た。
それによると、一三年三月までの二年間に股関節脱臼と診断された子どもは千二百九十五人で、うち百九十九人(15・4%)が一歳以降に診断されていた。このうちの三十六人は、三歳以上での診断だった。
注目すべきは、一歳以降に診断された百九十九人の大半が公的乳児健診を受けていたにもかかわらず、異常発見に至らなかったことだ。「健診での見逃しが裏付けられました」と服部さんは話す。
この病気は「先天性」と言いながら、実は出生時に脱臼していることは少ない。脱臼の準備状態で生まれたところに、おむつの当て方や抱き方、向き癖などの後天的要因が加わって起きる。患者は女の子が男の子の五~九倍と圧倒的に多い。現在の発生率は千人に一~三人。
生後三~四カ月の乳児健診で見つかれば、ほとんどが「リーメンビューゲル」というベルト状の装具を三カ月程度装着して外来通院で治せる。しかし、発見が遅れると脱臼したまま骨の成長が進んでしまうため、治療は難しくなる。
一歳を過ぎると入院して脚を引っ張る「けん引」という治療が必要になり、それでもだめなら手術が避けられない。放置すれば将来、痛みや日常動作の制限が生じる変形性股関節症に進行する恐れがある。
それだけに早期発見が重要だが、信濃医療福祉センター(長野県)の朝貝芳美所長は「患者数が激減し、医師や保健師が日常的に扱う病気ではなくなりました。診たことがないから知識もない。少子化で乳児健診の予算を削る自治体もあり、健診体制自体が脆弱(ぜいじゃく)化しています」と指摘する。
危機感から朝貝さんらは健診用のチェック表を作成し、普及に乗り出した。(1)股関節の開き具合(2)太ももや鼠径(そけい)部のしわが左右の脚で対称か(3)家族歴(4)女の子か(5)逆子で生まれたか-の五項目で簡便に判定できる内容で、脱臼の疑いがあれば、さらに詳しい検査が勧められる。
また「脚を締め付けるおむつや洋服は避ける」「両脚をM字形に開いて正面から抱く『コアラ抱っこ』をする」といった予防法も広めている。「数は減っても決して過去の病気ではありません。予防法の徹底と健診体制の再構築が必要です」と朝貝さんは話す。
- 中日新聞より引用 -
乳児の股関節脱臼のことはうわべの知識しか持ち合わせておらず、今回自分の勉強のためにも採り上げました。
記事にもあるように、後天的な要素が主で、出産時の体勢やおむつの当て方・抱き方などで起こることは知っていましたが、なかなか見る機会もないのでそれだけで終わっていました。
赤ちゃんへの小児鍼をすることもありますから、こういう知識は大切で、これから必ず診察時にはチェックしたいと思います。
特に一歳児未満であれば注意して診なくてはいけないですね。
赤ちゃんへの小児鍼はほんとうにまれですが、診る可能性がある以上、今回のことは覚えておきたい内容でした。
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