「
湯治入門その1、
その2」のつづきです↓
○ 温泉の種類前回、「温泉の効果」では、一般的な温泉に入ったときのことを書きました。
その中に出てきた「
療養泉」についてココでは説明していこうと思います

“療養泉”とは、
医療効果が期待できる温泉のことです。
温度や含有成分の種類と量などから11種類の泉質に分類することができます。
(同じ成分量の温泉はなく、微妙でデリケートなのが温泉の泉質。
11種類というのは、おおまかに分類されたものであると理解してください。)
種類としては・・・
◇単純温泉
- 溶存物質量(ガス性物質を除く)1g/kg未満かつ湯温が25℃以上のもの。
・単純温泉
◇塩類泉
- 溶存物質量(ガス性物質を除く)1g/kg以上含有するもの。温度不問。
・二酸化炭素泉
・炭酸水素塩泉
・塩化物泉
・硫酸塩泉
◇特殊成分を含む療養泉
- 指定された特殊成分を一定の値以上に含むもの。温度不問。
・含鉄泉
・含アルミニウム泉
・含銅-鉄泉
・硫黄泉
・酸性泉
・放射能泉
※詳しくは後で説明します
療養泉の泉質については、主に
新泉質名・旧泉質名・掲示用泉質名の3種類が紹介で用いられています。
新泉質名は、昭和54年にそれまで用いられていた旧泉質名に代わるものとして導入されました。
しかし、旧泉質名のほうが分かりやすいこともあって、実際には両方が併用されています。
さて、私たちが正確な泉質名を知るにはどうしたらいいのでしょうか?
それは、温泉の脱衣所などに掲示してある
温泉分析書を確認しなければいけません。
“温泉分析書”とは、温泉の自己紹介文のようなもので、分析機関によって温泉の含有成分・温度・泉質名・浴用、飲用の適応症・禁忌症などが表記してあります。
温泉の施設には掲示が義務付けされているので、探せば見つかると思います。
最近ではインターネットでも掲載しているところやサイトも増えてきているようです。
(※参考-
温泉分析書図書館などなど)
また、全ての療養泉(&ふつうの温泉)で効能があるとされる疾病・外傷の症例を「
一般的適応症」といいます。
症状は、神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺、関節のこわばり、うちみ、くじき、慢性消化器病、痔疾、冷え性、疾後回復期、疲労回復、健康増進です。
温泉の泉質なんて知らなくても・・・。というかたもみえるかもしれませんが、それは違います!
温泉の泉質について知っていると、どんな湯に入りたいのか・どんな症状に適しているのかを検討して温泉地を選ぶことができるから、とても大切です

せっかく湯治に行くのなら、泉質をチェックすることは欠かせません^^
ここから、さらに泉質について詳しく説明していきますね
① 単純温泉[温度が25℃以上で、温泉水1kg中に含有成分が1000㎎未満の温泉]
含有成分量が少ないことにより、刺激が弱く作用も穏やかで肌にやさしい。
概ね、くせが少なく、無色透明で無味・無臭。
成分の少ない単なる湯、質の低い温泉だと誤解されやすいが、
様々な成分を少量ずつ含んだバランスの良い泉質と覚えておくのが妥当です。
また、一言で単純温泉といっても、体への効果は溶けている成分によって異なるが、刺激が弱く肌触りもやわらかなので、
高齢者を含めて万人向きで利用範囲も広い温泉です。
名湯とされる温泉もこのタイプの温泉に多く、古来より「美人の湯」「神経痛の湯」と呼ばれ、日本では最も数が多い温泉です。
◆主な適応症 … 一般的適応症に加え、
病後回復期の静養、手術後の療養、骨折・外傷後の療養にもよい。
飲泉では
軽い胃腸炎によく、消化器官の働きを活発にしたり利尿作用があります。
② 二酸化炭素泉 [温泉水1㎏中に遊離炭酸1000mg以上を含む温泉]
炭酸に包まれる泡の温泉。
成分の炭酸ガスの小気泡が無数の泡となって全身の肌につくため「泡の湯」とも呼ばれています。
温度が高いと炭酸ガスは空中に抜けてしまうため、低温の温泉が必然的に多くなってしまうが、
保温効果が高い温泉でもある。
日本には比較的少ない泉質で、欧州には高濃度の二酸化炭素泉が多い。
日本では、泉温の高い大分県の長湯温泉が有名。
◆主な適応症 … 「心臓の湯」とも呼ばれ、
高血圧、動脈硬化などに効果的。
運動麻痺、筋肉痛・関節痛、打撲、切り傷、冷え症、更年期障害、不妊症にもよく効く。
飲泉では胃粘膜の血行をよくし食欲を高め消化活動を助けてるので、
慢性消化器病・慢性便秘によい。逆に
下痢のとき飲泉は禁止である。
③ 炭酸水素塩泉 [温泉水1kg中に含有成分が1000mg以上あり、そのうち重炭酸ソーダの含有量が340mgを超える温泉]
肌がなめらかになる冷の湯。
ナトリウム炭酸水素塩泉は、アルカリ性で
皮膚表面の角質を軟化、皮脂や分泌物を乳化して洗い流すため、肌がすべすべになるため「美人の湯」と呼ばれる。
また、皮膚の脂肪や分泌物を乳化して洗い流すためと皮膚表面からの水分の発散が盛んになり、体温が放散され清涼を感じるため、浴後清涼感があり「冷の湯」とも呼ばれる。
(以降
wikiより - 強アルカリ性の温泉では入浴すると肌がヌルヌルする。この事からパンフレット等で“美肌効果”、“美人の湯”をうたう施設も有るが、これは効能では無い。 化学反応により皮脂から石鹸に類似した物質が作られる。つまり石鹸を塗らなくても塗った事と同等の効果があるだけである - という指摘もあります。)
◆主な適応症 …
慢性皮膚病、アトピー、火傷、創傷などに効果的。
入浴と飲泉で
痛風、糖尿病、肝臓病、胆石、慢性胆嚢炎、慢性消化器病、気管支炎、関節痛、打撲などにもよい。
高血圧症、腎臓病の人は重曹泉の飲泉は控える。
④ 塩化物泉[温泉水1㎏中に含有成分が1000mg以上あり、陰イオンの主成分が塩素イオンの温泉]
皮膚についた塩分が体温の放散を妨げるので、保温効果が高い「熱の湯」。
高齢者向きのよく温まる温泉。
ほとんどが無色透明だが、強食塩泉は空気に触れると茶褐色に変色し、濃い部分のものは湯船を鍾乳石状に固めてしまうほどです。
ちなみに塩分が主成分となっているので、当然飲用すると塩辛く、塩分濃度が濃い場合は苦く感じられる。
◆主な適応症 … 入浴と飲泉で
貧血、慢性消化器病、慢性便秘によい。
また、
筋肉痛・関節痛、リウマチ、打撲、捻挫、冷え症、慢性婦人病、月経障害、不妊症、病後回復にもよく、殺菌効果があるので
外傷治癒にも利用される。
ただし、
食塩制限のある疾患、高血圧症、腎臓病、心臓病、むくみのあるときは飲泉は控える。
⑤ 硫酸塩泉[温泉水1㎏中に含有成分が1000mg以上あり、陰イオンの主成分が硫酸イオンの温泉]
動脈硬化の予防になる「中風の湯」。
(脳卒中を東洋医学では中風と呼びます。)
苦味があり、陽イオンの主成分によりナトリウム-硫酸塩泉〔旧称:芒硝泉〕、マグネシウム-硫酸塩泉〔旧称:正苦味泉〕、カルシウム-硫酸塩泉〔旧称:石膏泉〕に分けられ、温泉入浴を禁じられている人以外
にはこれといった弊害のない無難な泉質です。
また、硫酸塩は、
強張った患部(硬くなった肌)を柔らかくして動きやすくする働きを持っているため痛風や神経痛の症状に効果が高い泉質でもあります。
◆主な適応症 …
ナトリウム-硫酸塩泉は、浴用では
高血圧症、動脈硬化症、外傷に効果があり、また飲用では胆汁の分泌が促進されて腸の蠕動運動を活発化するため、
胆道疾患、弛緩性便秘、糖尿病、肥満症、痛風に効果があります。
マグネシウム-硫酸塩泉は、浴用・浴用ともに他の硫酸塩泉と同じ効果があり、特に
高血圧症の血圧を降下させ、
脳卒中後の麻痺を改善し、
動脈硬化予防の効果があります。
カルシウム-硫酸塩泉は、浴用ではカルシウムの鎮静効果が高いため、昔から 「傷の湯」 「中風の湯」 といわれ、
高血圧症、動脈硬化症、脳卒中、慢性関節リューマチ、打身、切傷、火傷、痔瘻、捻挫に効果がある。また、皮膚病では
乾癬、慢性湿疹、ニキビ、皮膚のかゆみにも良いとされる。飲用ではナトリウム-硫酸塩泉と同じ効果があるほか、
じんましんにも効果がある。
ただし、硫酸塩泉は、
下痢、腎臓病、むくみ、甲状腺機能亢進症のとき飲泉は控える。
⑥ 含鉄泉[温泉水1㎏中に総鉄イオン(鉄Ⅱまたは鉄Ⅲ)を20㎎以上含有する温泉]
湧き出したときは無色透明、空気に触れると鉄の酸化が進み赤褐色になる赤湯。
また、
貧血、月経障害、更年期障害など女性に多く見られる症状に効くため「婦人の湯」とも呼ばれています。
◆主な適応症 … 入浴では、ではよく温まるため、
リウマチ性疾患、更年期障害、月経困難症、子宮発育不全、慢性皮膚病、苔癬(たいせん)、筋肉痛、関節痛に効果があります。また、鉄分を多く含んでいるため造血作用が促進され、
貧血にも良いです。また、飲泉では、胃酸の分泌を高め、鉄を吸収しやすくするため、
貧血に効果があるが、飲用の場合は褐色に濁った温泉水は効力が落ちているため、
湧出したばかりの透明の湯を飲用し、濃成分のものは希薄利用する必要があり多飲は禁物なので注意が必要です。
強酸性の鉄泉の場合は
乾燥肌の人には向かないで注意してください。
⑦ 含アルミニウム泉[温泉水1㎏中に含有成分が1000mg以上あり、陰イオンとして硫酸イオン、陽イオンとしてアルミニウムを主成分とする温泉]
殺菌消毒作用が強く、肌のハリを回復させたり、慢性皮膚病など肌に効果がある他、眼病に効くため「眼の湯」とも呼ばれている。
日本では少ない泉質でもある。
◆主な適応症 … ⑩酸性泉に準じるのでそちらを参照。
慢性皮膚病、神経症、眼病によく効く。飲泉では、
慢性消化器病に効く。
⑧ 含銅-鉄泉[温泉1kg中に銅イオンを1mg以上含有する鉄泉]
鉄泉に銅が含まれる温泉で、水中の金属分が空気に触れる事により酸化するため、湯の色は黄色または赤色をしています。
草津温泉や玉川温泉の源泉の一部にみられる程度で、数が少ない泉質。
◆主な適応症 … ⑥含鉄泉を参照。
月経障害、高血圧症にもよく効く。
⑨ 硫黄泉[温泉水1㎏中に総硫黄2㎎以上含有する温泉]
たまごの腐ったような独特の臭いのある泉質。
硫化水素の含有の有無により、全く含まない単純硫黄泉と、これを含む硫化水素泉に分けられる。
単純硫黄泉は、無色透明の肌ざわりのいい湯で「美人の湯」とも呼ばれている。硫化水素泉は湧出のとき無色でも空気に触れて白濁した湯になる。
万病に効くと呼ばれる名湯が多い。反面、硫黄泉はかなり刺激の強い部類の温泉に当たり、注意しなくてはいけないことも多い泉質でもある。
また、硫化水素は金属を酸化して黒くするので、金属製のアクセサリーなど装飾品は外して入浴したほうが無難です。
◆主な適応症 … ②炭酸泉同様に、末梢血管拡張作用が強いので
動脈硬化症、高血圧症、心臓病などに適した「心臓の湯」であり、
しもやけ、頸肩腕症候群にもよく効く。
また、 硫黄泉は、解毒作用があるため、金属中毒や薬物中毒にも利用され、
慢性皮膚病、慢性関節疾患、慢性関節リウマチなどにも良いとされ、硫黄泉に含まれている硫黄イオンはインシュリンの生成を促進する効果があるため、
糖尿病などにも有効とされています。
さらに、皮膚の角質を軟化溶解するので、
角化症、慢性湿疹、苔癬(たいせん)、慢性膿皮症などの皮膚病のほか、寄生虫の疥癬(かいせん)にも効果があります。
硫化水素泉の湯気を口から吸入すると痰の切れが良くなり、
慢性気管支拡張症などに効果もあるため「痰の湯」とも言われるが、有毒なので吸いすぎに注意が必要。
このほかにも、
動脈硬化、切り傷、慢性婦人病、筋肉痛・関節痛、痔などにもよい。
飲泉では、
慢性消化器病、糖尿病、便秘、痛風によい。
★禁忌 … 硫黄泉はかなり刺激の強い温泉で、入浴・飲泉ともに身体に強い変調作用を与えるため、
病中病後で体力が落ちている人や高齢者、乾燥肌、光線過敏症の人には特に注意が必要でなるべく避けたほうがよいでしょう。
皮膚や粘膜、呼吸器の弱い人は湯あたりや皮膚炎を起こしやすく、リウマチや喘息の患者は特に配慮が必要です。
また、有毒なので換気の悪い浴室では中毒を起こすことがあり、
換気に気配りをする必要があります。
野湯の場合、窪みや穴状の地形の中にあると高濃度の硫化水素ガスが溜りやすく、冬季には地形にかかわらず積雪で温泉の周りが囲まれた状態でも同じことが起き、過去に中毒死亡事故も起きています。
⑩ 酸性泉[温泉水1kg中に水素イオンを1mg以上含有し、酸性を示す温泉]
殺菌効果が高く、刺激が強い温泉。
殆どが無色又は微黄褐色で、硫酸・塩酸により飲むと強烈な酸味があり、強い刺激作用・殺菌作用を利用し、古い肌を剥がし新しい肌に刺激を与えてることで新陳代謝が促進されるので、皮膚病などの治療に使われる。
◆主な適応症 …
水虫や湿疹・疥癬などの慢性皮膚病、慢性婦人病、月経障害、筋肉痛、関節痛、糖尿病によく効きます。抗菌力があるため、 トリコモナス膣炎、疥癬、水虫に効果あり。
飲泉では、
低酸・無酸症や低色素性貧血、慢性消化器病に効く。しかし、誤って飲用すると
胃をただれさせたり、歯を溶かすため、薄めるなどの工夫をしなければならない。
また、刺激が強いため、
湯ただれを起こすことがあるので、
病弱者、高齢者及び皮膚の弱い人は控えたほうがいいです。もしくは短時間の入浴で、入浴後真湯でしっかり洗い流し十分拭き取るように。
⑪ 放射能泉[温泉水1kg中にラドンを100億分の30キュリー以上含有する温泉]
文字通り放射能を含み、一般的には
ラジウム温泉といわれる無色透明の温泉。
放射線と聞くとびっくりしますが、温泉中に含有されるラドンは常温で気体、湧出後は空気中に散飛するため全く心配がなく、ごく微量の放射能はむしろ人体に良い影響を与えるというホルミシス効果により免疫細胞が活性化される効果があるとされています。
薬効の効率がもっとも高い泉質で、数が少なく貴重な温泉です。しかし、放射能泉は空気に触れたり、時間がたったりすると効能成分が失われやすいので、温泉が浴槽の下から注がれている風呂が理想的です。
また、ラドンは吸入が一番よく、温泉地に滞在しているだけでも療養効果があるとされ、浴槽を仕切って、ラドンを吸入しやすくした浴場も見受けられます。
◆主な適応症 …
高尿酸血症、痛風、尿路慢性炎症、糖尿病に効果があり、
下垂体副腎系、卵巣、睾丸の機能を高める作用があります。尿酸を尿から出すので「痛風の湯」とも言われています。
入浴によって腎機能は改善され、鎮静作用もあるので、
神経痛、リウマチ、神経麻痺、自律神経過敏状態などに利用されています。そのほか、
高血圧、動脈硬化、慢性皮膚病、慢性婦人病にも効果があります。
飲泉では、
痛風、慢性消化器病、慢性胆嚢炎、胆石症、神経痛、筋肉痛、関節痛に効果があります。
ただし、放射能泉は
湯あたりを起こしやすいので注意が必要です。

温泉は、ひとつとして同じ成分のものはないと言われています。
おおまかに分けられた11種類の泉質をみても効果や注意点が大きく違うので、自分がなんのために湯治にいくのかによって、泉質を選ばなくてはいけないのです。
最後に、同じ病気の人の話を聞き、「あの人がどこそこの温泉でよくなったから自分も行ってみようか」などと判断して温泉に療養に行くのは、かえって病気を悪化させる危険すらあります。
特定の病気、合併症を持った方は自分の症状によって入浴時間、温度、成分がそれぞれ異なることは覚えおいて下さい

長々とした説明で逆に迷った、分からなくなった、読み疲れた(笑)という方もみえると思います^^;
なので次回は、温泉地・宿選びについて説明していこうと思います

・・・
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